補助金を受給した経営者が意外と見落としがちなのが「領収書の保管期間」です。事業再構築補助金・ものづくり補助金・小規模持続化補助金はいずれも補助事業完了年度の終了後5年間の保管義務がありますが、法人税法の7年義務や設備の処分制限が重なり、「結局いつまで保管すればいい?」と悩む経営者が後を絶ちません。実質最長10年保管が必要なケースもあるため、実務フローに沿って一気に解説します。
補助金の領収書は「5年・7年・10年」のどれ?—義務の根拠と起算点
| 保管義務の根拠 | 期間 | 起算点 |
|---|---|---|
| 補助金制度(各補助金共通) | 5年間 | 補助事業完了年度の終了後 |
| 法人税法(通常) | 7年間 | 確定申告提出期限の翌日 |
| 法人税法(欠損金あり) | 10年間 | 確定申告提出期限の翌日 |
「最長10年」になるのはどんなケース?
タイトルにある最長10年が実際に適用されるのは、主に次の2つのシナリオです。
- 法人税法の欠損金(赤字)がある場合:青色申告法人が欠損金を計上した年度は、帳簿書類の保管義務が10年に延長されます(法人税法施行規則第67条)。例えば補助事業の実施年度に設備投資で赤字になった場合、その年度に関係する補助金関連の全ての領収書は確定申告提出期限の翌日から10年間保管しなければなりません。
- 処分制限期間が5年を超える設備を取得した場合:補助金で取得した設備には補助事業完了後も「処分制限期間」が設けられており、この期間中は設備の売却・廃棄・転用が禁止されます。処分制限期間が補助金の5年義務を超える場合、設備に関連する領収書の保管は処分制限終了まで継続が必須です。マシニングセンタ(法定耐用年数10年)などの大型機械装置はこれに該当するケースがあります。
処分制限期間—設備種別ごとの保管継続ルール

補助金で設備を取得した場合、補助金制度の5年保管義務が終了した後も処分制限期間が残っている設備に関しては、証拠書類の保管を継続しなければなりません。代表的な設備種別の処分制限期間の目安は以下の通りです。
| 設備の種類 | 処分制限期間の目安 | 補助金5年義務との関係 |
|---|---|---|
| ソフトウェア(市販品) | 5年 | 補助金5年義務と同等のため追加保管不要 |
| 工具・器具・備品 | 5〜6年 | 補助金5年義務とほぼ同等 |
| マシニングセンタ・CNC工作機械 | 10年 | 補助金5年義務終了後もさらに5年の追加保管が必要 |
| 建物附属設備(空調・電気設備等) | 15年 | 補助金5年義務終了後もさらに10年の追加保管が必要 |
つまり、ソフトウェアは補助金の5年義務で完結しますが、マシニングセンタは処分制限10年・建物附属設備は処分制限15年と、補助金の保管義務よりはるかに長い保管が求められます。補助金の証拠書類(領収書・請求書・検収書・納品書等)は、補助金制度の5年義務と処分制限期間のうち長い方が終了するまですべて保管し続けてください。
実績報告への提出ルール—「写し」「電子データ」の正しい扱い方
- 紙の領収書 → コピー(写し)を報告書に添付、原本は自社保管
- Jグランツ電子申請 → PDFデータ化してアップロード
- メール・クラウド受領の書類 → 電子データのまま保存必須(紙印刷は不可)
2024年1月施行の電子帳簿保存法改正により、電子取引で受け取った書類の電子保存が完全義務化されました。受け取り方法に応じた保存体制の整備が急務です。
インボイス制度と2024年電帳法改正—最新ルールへの対応チェック
2023年10月開始のインボイス制度では、消費税の仕入税額控除に適格請求書(①登録番号②取引年月日③取引内容④税率別合計額⑤適用税率⑥消費税額)の保存が必要です。補助対象経費に消費税を含む金額で計上する場合、発行元が適格請求書発行事業者かを事前確認してください。
2024年電帳法改正では電子取引の完全義務化に加え、紙領収書のスキャナ保存に関する要件も大幅に緩和されました。実務に直結する変更点は次の2つです。
- 解像度・階調情報付与義務の廃止:改正前は紙の領収書をスキャン保存する際、解像度200dpi以上・RGB各256階調以上であることを証明する情報の付与が必須でした。2024年1月以降はこの付与義務がなくなり、スキャナ保存の技術的ハードルが大きく下がりました。
- 受領後即時タイムスタンプ付与義務の柔軟化:改正前は紙の領収書受領後おおむね3日以内(最長7営業日以内)のタイムスタンプ付与が義務でした。改正後は、適正事務処理要件(社内承認フローと責任者確認体制の整備)を満たす場合、タイムスタンプなしで入力期間内(最長2か月+7営業日)にスキャン・保存することが認められました。
補助金の紙領収書をスキャンして保存する場合も、これらの緩和を活用して保存フローを効率化できます。ただし、スキャン後の紙原本廃棄は現時点では原則認められていませんので、原本は引き続き保管してください。
領収書が発行されない支出—賃金台帳・タイムカード・業務日誌の組み合わせ

人件費・社内スタッフの労務費など、領収書が発行されない支出については、複数の書類を組み合わせることで支出実績を証明します。補助金実務では次の3点セットが標準的に求められます。
- 賃金台帳:補助事業に従事した従業員の氏名・役職・賃金額・支払い実績を記録した帳簿。給与計算ソフトの出力帳票でも代替可能です。
- タイムカード(出勤簿):勤怠の客観的記録として使用します。補助事業に従事した日付・時刻が識別できることが重要です。
- 業務日誌(作業日報):補助事業のどの業務にいつ・何時間従事したかを記録する書類です。原則として毎日記載し、補助事業への従事実績時間を具体的に記録することが必要です(例:「新型プレス機の試作・動作検証 4時間」のように業務内容と時間を明記)。事後の一括記入・月まとめ記入は根拠が薄いとみなされる場合があるため、当日または翌営業日中の記入を徹底してください。
これら3点を補助事業の実施期間にわたって整備・保管することで、労務費の適正支出を証明できます。保管期間は他の証拠書類と同様に、補助金の5年義務・法人税法の保管義務・処分制限期間のうち最も長い期間に従います。
複雑な保管義務の判断や、自社の設備・経費構成に応じた正確な保管期間の特定は、補助金専門家への相談が最も確実です。当サイトでは無料相談窓口を設けており、無料会員登録で最新の補助金・電帳法情報を毎日お届けしています。保管義務にお悩みの際は、ぜひご活用ください。
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